「いやー、まさか始業式の翌日からがっつり詰め込んだ授業があるとは思わなかったわー」
「おう、大河の所もか」
「ってことは竜児も?」
「おう。こりゃ一学期中に教科書全部終わらせるってのも嘘じゃねえかもしれねえな」
「むう、さすがは国立選抜ってところかしらね」
「だな。ところで大河、今日は晩飯は?」
「ん、大丈夫。竜児のうちで食べられるわよ」
「おう。それじゃ、メニューのリクエストはあるか?」
「そうね……そういや今日はかのうやが魚の特売日になっているはずよね?」
「おう?……・おう、憶えてたか」
「当たり前じゃない、何回一緒に買い物に行ったと思ってるのよ。で、まぐろ丼!」
「わかった、まぐろは薄く、だな。そのままとヅケとどっちがいい?」
「むう、それは悩む所ね……」
 と、突然足を止める大河。その見やる先には大橋。
「……ねえ竜児」
「おう?」
「……この一ヶ月半、どうだった?」
「どうって、別に大した事は無かったぞ」
「そうじゃなくて……その……わ、私が、いなくて……」
「おう……そりゃ、寂しかったに決まってるじゃねえか。だけど……」
「うん、わかってる。あのね、昨日も言ったけど……私も、やっぱり寂しかったのよ、時々、凄く。だけどね……竜児の言葉がね、あったから……頑張れたんだと思うの」
 それはまだ、残響のように体の中に残っているけれど。
「だから……もう一度、聞かせてくれない?」
「おう」
 竜児は大河の方に向きなおり、その瞳を真っ直ぐに見つめて。
「嫁にこい」



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