「櫛枝実乃梨、通称みのりんのハイテンションインタビュー!今日は巷で噂の愚かなリンゴ、バカぁップルに来ていただきましたー!」
「どうも、高須竜児です」
「逢坂大河です……本当にこんなのやるわけ?」
「やるよー!もう一度……もう一度……って3回はやるよーっ!」
「うわァァァワァみ、みのりん!ちょっ」
「なあ、ここはなんで櫛枝が知ってるんだって突っ込むところか?」
「そこは掘り下げないっ。あたしは神の目で訊くからねっ。はい、あの晩ちゅーのあとなにしましたかっ?」
「寝ました」
「寝たわよ」
「……日本語って便利だなあとつくづく感心するぜ。逃がさねえ。えー。せ、せくろすしましたかっ?」
「してません」
「し……してない……」
「ちょっと攻める角度を変えてみよー。駆け落ちに行く電車の中で、ふたりの荷物はどうなってた?」
「俺は足元に置いてたな」
「私のは竜児が網棚に上げてくれた」
「はい、高須くんは抱えた荷物を地に着けた。大河は棚上げしたままだった、ということだねっ?」
「そ、そういうことになるかな。ははっ。ちょっと邦画的な象徴演出だよね」
「逃げだして抱えた荷物っていう意味な。何を抱えているかはご覧の皆さんお感じ取りくださいねってとこだ」
「そう!そうだよたきゃすきゅんっ!ふたりの荷物をここから追っかけると面白いよ」
「高須本家で泰子をおびき寄せるウソ電話を大河がかけてるとこではちぐはくに置かれてるな」
「そのあとキスシーンではぴったり添ってる。でも向きがチグハグ。大河の方だけ正しく置かれていないわけよ」
「そうね、後ろ暗いっていうのかな。竜児の決意に置いて行かれたって気分」
「そして帰りの電車だあ!ふたりと荷物の位置の関係はもう描かれない。ただ寄り添って正しい向きで置かれているのみだっ」
「ちなみに、荷物については泰子が実家に帰って来て玄関先で投げ捨てる、そのあとストーブ横で温まってるてのもあるな」
「ねえみのりん、当初の質問と関係なくない?これ」
「関係あるぜよ。だって荷物の中には君たちが心でしか触れあっていなかった、てのがのが必ずあるはずだからねっ」
「キスでいいじゃん」
「キスでいいだろ」
「あーーっ、しまったー!居直られたーーっ!!じゃあさじゃあさ、翌朝帰る時に大河が高須くんのマフラー巻かれてたのは?」
「んー。寒いよなって竜児が巻いてくれただけ。いつもそうだったし」
「帰りの電車の中で高須くんが真っすぐ座ってるのに大河が寄りかかってるのはーーっ?」
「好きだから」
「そうかい韜晦するのかい。うっへっへじゃあ行くよー?そのとき、脚をもじもじさせたのはなぜっ?」
「うっ」
「俺……ちょっとあさって向いてたから見てねえけどそんなことしてたのか大河。大丈夫か?痛かったのか?」
「ばかっ!ひ……」
「ひ……、ひ、何ですかあっ?大河ぁ?さあさあさあさあっ?」
「……左ひざがかゆかったんで右のひざでかいたのよ」
「はあ?」
「だって手は竜児に無理やり握られてたしー。なんかひざボリボリかくのいやだったんだもん」
「おう。そうか。……無理やりかよ。そうだよなーははは。そうかヒザかゆかったのか」
「ちくしょー!そうかよおめーらどうしても認めねえのかよぅ。うっ、うっうっうっ……」
「みのりん、なにも泣くこと……」
「そうだよ櫛枝、結ばれた表現がキスでした、でいいじゃねえか」
「うっうっうっ……じゃあさ大河、その後高須くんと別れて自分ち戻ってさ、椅子で留守電きいてるときなんで片脚だけあげてたのー?」
「あー。独りになったら緊張ほぐれてさ、なんか挟まってる感がしてさ……あっ」
「……お前」
「よし大河!実によし!冬のユニフォームとも言える純白のコート、そこからナマ脚が出てるカットはここだけだもんな?」
「み、みみのりん、あれよ!作画スタッフのお色気サービスってやつよっ。きっと」
「うん。もうそれでいいや。……でも大河?親友として心配ごとがひとつあるの」
「なあに?」
「ナマはいかんと思うのね。あとあと考えたらね?そこんとこはどうしたの?」
「ああなんだそんなこと。駆け落ち行き電車のシーンもう一度見てよ」
「ん?ヒントなんかあったかな?」
「私たち、コンビニ寄ってんじゃん」
「はいっ。はいっ、はぁいっ!『とらドラ!』は完ぺき!みのりんのハイテンションインタビュー、でしたっ」

〜おしまい〜



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