「ねえ竜児、これ見て」
「おう? 『おれのこえ』のチラシじゃねえか。クーポンでもついてたか?」
「そうじゃなくて、ほら、ここ」
「……『コスプレ衣裳レンタルサービス始めました』……カラオケでコスプレ?」
「アイドルとかパンクなロッカーの衣裳着て、なりきって歌うんじゃないの?」
「おう、なるほど」
「なんか面白そうだし、ちょっと行ってみない?」


「ねえ竜児、アホロン毛とバカメガネは? 誘ったんでしょ?」
「春田は例の女子大生とデートだそうだ。能登も何か先約があるってさ」
「奇遇ね〜」
「おう香椎、何がだ?」
「麻耶ちゃんも今日は約束があるからってパスなのよ」
「……へぇ〜、そうなんだぁ〜」
「おやあーみん、どうかしたかね?」
「べっつにぃ〜」
「おーい皆、くじが出来たぞ」
「おう、すまねえな北村。それじゃ、この紙コップに入れてよく振って、と」

 1番・香椎奈々子:メイドさん
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
「おう……」
「むう、これは……」
「そこの男子二人! デレーっとするんじゃない! 特に竜児!」
「お、おう、すまねえ」
「いや、しかしこいつはなかなかポイント高いね〜。みのりんレーダーにビンビンきてるぜ!」
「ねえ実乃梨ちゃん、今年のミスコン、うちのクラスこれで行かない? 去年被りまくったからメイドは少なくなるだろうし」

 2番・北村裕作:サンタクロース
「うーん、普通によくあるコスプレよね〜」
「しかし、イマイチ新鮮味が無いねえ」
「北村君のサンタコスはクリスマスパーティで見たから……これとはちょっと違うけど」
「おう、そういや大河はステージに出たもんな。準備中ずっとアレを間近で見せられてたわけか……」
「はっはっは、ではリクエストにお応えして、去年のクリスマスを完・全・再・現!」
「おい北村、お前まさか」
「クロス・アウッ!」
「ひゃー!!」
「ちょっと裕作! あんた何考えてるのよ!」

 3番・櫛枝実乃梨:音楽家
「ベントーベンがショッパン食って、ヘンデル屁ん出るバッハっはー!」
「おお櫛枝、その衣裳もカツラも良く出来てるな」
「でしょでしょ! いやー、まさかカラオケ屋でこんな逸品に出会えるとは思わなかったよ」
「……みのりん……」
「……なんで櫛枝はイロモノ担当になるんだろうなあ……」
「……いいんじゃない? 本人楽しんでるんだし」
「実乃梨ちゃん、写メ撮っとく?」
「おーう、頼むぜ奈々子様ー!」


 4番・川嶋亜美:ゴスロリ
「亜美ちゃん、きれーい!」
「うおお、お宝フォトゲットだぜ!」
「奈々子も実乃梨ちゃんもありがと。まあ亜美ちゃんってば元がイイから、なんでも似合っちゃうのよね〜。
 ……って、そこ二人は何で微妙な表情してんのよ」
「おう、綺麗なのは綺麗なんだが……なんだかちょっと恐くてなあ……」
「亜美は身長があるからな。そういう格好だと威圧感があるのはしょうがないだろう」
「ぷくく、ばかちー言われてやんの」
「……そうよねー、こーゆーフリフリヒラヒラしたのはタイガーの得意分野だものねー。『お人形さんみた〜い。ちっちゃくて可愛い〜』とか言われちゃうんでしょ?」
「ぐ……」

 5番・高須竜児:チャイナドレス
「キモっ」
「これは……ちょっとねえ……」
「あいやー……流石にないかなー……」
「ごめん竜児、正直あんたキモいわ」
「……いや、いい。自分でもわかってるから。くそ、なんでこんなことに……」
「まあ、女性用の方が種類が多いからな。そんなこともあるだろう」

 6番・逢坂大河:「セーラー服」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ちょ、ちょっと、なんで皆黙ってるのよ! やだ、そんなに変?」
「……ふぉっ」
「実乃梨ちゃん、鼻血鼻血! はい、ティッシュ!」
「おお、ありがと奈々子様。ふ、ふへへ、なんかこー、滾るモノが……」
「なんで? 何の変哲も無いセーラー服着ただけなのに、あんたはなんでそんなに完成度高くなるわけ!?」
「いや、これは……うちの制服を変えるように生徒会から要望を出そうかな」
「…………」
「竜児?」
「お、おう、すげえ似合ってるぞ」



「ねえ竜児」
「おう?」
「さっきのセーラー服、そんなに似合ってた?」
「おう。皆の反応でもわかっただろ」
「でも、竜児だけはちょっと反応遅かったわよね」
「それは、その……」
「竜児の趣味じゃなかったとか?」
「いや……正直に言うとだな……思わず『好きだ』とか言いそうになっちまったのを堪えててだな……」
「そ、そうなんだ……えへへ……今度中学の時の制服持ってくるわね」
「おう? 何でだ?」
「それもセーラー服なのよ」
「おう……」



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