「ちょっと蘭。らーんってば」
「んあ、すーちゃん、何?」
「何じゃないわよ。アンタ最近、ぼーっとしてること多くない?」
「え? そうかな?」
「そうだよ。……さては。オトコだな?」
「え〜? わかっちゃう?」
「わからいでか。で、誰よ?」
「えっと、あそこ、前から3番目の……」
「どれどれ…………ひょっとして、あの強面君? えっと、名前はたしか、高須……」
「竜児君」
「そうそう、その高須君……でも蘭、アレは無いんじゃない?」
「どうして?」
「いや、だってさ……正直恐すぎるでしょ、あの目は」
「ちっちっち、いいかねすーちゃん、人は見た目じゃわかんないものなんですのよ」
「それにしたってさ……」
「高須君真面目だよー。それにすっごく優しいの」
「そう言うからには、何かあったわけ?」
「んとね、先月の新歓コンパ、すーちゃん用事で来なかったでしょ」
「あー、ミキから聞いたけどあんたがぶっ倒れたっていう?」
「倒れてないもん。ちょっとお酒飲んで気持ち悪くなって吐いちゃっただけだもん」
「似たようなもんじゃん。で?」
「その時真っ先に気づいて介抱してくれたのが高須君なの。汚しちゃった所も嫌な顔一つしないで片付けてくれて、タクシー呼んでくれて」
「はー、なるほどねえ……」
「それに、意外にマメで家庭的」
「その根拠は?」
「お昼ご飯は必ずお弁当なの。それもけっこう手の込んだ」
「毎日観察してたわけ? アンタ、ストーカーの素質あるかもね……でもそれって、彼女が作ってるとかじゃないの?」
「いやー、それはないでしょ、あの顔で」
「蘭……さっきと言ってる事違わない? っと、その高須君にお客さんみたいね。うわ、なんか可愛い子だ。あれって彼女じゃないの?」
「い、いやー、どうかなー。ちっちゃい子だし、妹とかじゃないのかなー」
「それにしちゃ似てないけど……」
「あ、ほら、高須君屈んだでしょ。あーやって目線を合わせてあげるのが優しい証拠ってええええ!?」

「た、大河おまえ、なんでこんな所で、いきなりキ、キスとか……」
 思わず声を上ずらせる竜児に大河はニヤリと笑って。
「そろそろあんたの本性が周りに知れてくる頃だから、ちょっと釘を刺しておこうと思って」




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