うっすらと暑さを残す秋晴れの空の下、いつもの如く騒がしいやりとりを繰り返しながら歩く2人。

「大河っ、何度言ったらわかるんだ。MOTTAINAIだろうがっ!!」
「うるさいわね、駄犬!ほんとーに、アンタときたら毎回毎回…。」
「あのなぁ、MOTTAINAIは世界に通じる大事な・・・・」

 このオカン体質の男にきっちりと躾とは何たるかを教え込んでやろうと口を開きかけたが、
一歩遅れて隣を歩いて居た筈の竜児がいつまでたっても視界の中に入ってこない。
歩みを止めて後ろを振り返ると、立ち止まって俯いてる竜児が居た。


「・・・・・・」


「りゅ、竜児? どうしたの…!?」
「…くっ」
「えっ、えっ・・・、な、何でアンタ泣いてるの!?」

 慌てて走りより下から覗き込むと、悪人面の男は顔を俯かせ手まで震わせながら
その凶悪な三白眼から涙の雫を地面に落としていた。
突然の竜児の反応に何がそこまで彼を悲しませているのか理解不能な大河は
恐る恐る竜児の制服のシャツの端を掴んで彼の反応をうかがう。
これではいつもと立場が逆だ。

「と、突然どうしたってのよ?」
「す、すまん、こないだ俺にとって掛け替えのないヒト(女性)が亡くなってしまった事を思い出しちまってな。」
「はぁ!?、だ、だ、誰よ!その女っ!!!」

 竜児は高くなった秋空を見上げ、ケニアがあるであろう方向に思いを馳せ、

「ワンガリ・マータイさん…、俺は貴方の事を忘れないよ…。」


「…誰?」
「俺と志しを同じくする尊敬できる素晴らしい人だ・・・。」



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