「た〜いがっ」
 親友の声に振り向けば、なぜだかそこにはにんまりとした笑みがあって。
「ゆうべはおたのしみでしたね?」
 ぐふぐふと笑う実乃梨に、しかし大河が返すのはきょとんとした表情。
「はぁ?」
「またまた〜、とぼけても無駄だぜ〜」
「だから、何の話?」
「証拠はあがってるんだよ……そこっ!」
 実乃梨がびっ!と指差した先、大河の首筋には、白い肌に浮かぶ僅かに赤い斑点が。
「見紛うことなきキスマーク!……いや〜、お熱いこってすなあ〜」
 だが大河は動じることなく。
「ああ、これ……蚊よ、蚊に食われたの」
「大河……その誤魔化し方は定番だけど、ちぃ〜っと季節外れじゃないかね?」
「本当に蚊なんだってば。最近は建物の中は暖房が効いてるから、下手すると冬場でも出てくることがあるんだって」
「……ホントに、ホントなわけ?」
「そうよ。大体、竜児が外から見えるような所に痕つけるわけないじゃない」



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