「ほら……よくみとけ」
「う、うん。ゆっくり、ゆっくりやって見せてね、竜児?」
「おう。こうやって沿わせて入れる……」
「んん」
「引いたり押したりしながら……力を込めずに自然に進めていくんだよ」
「あっ、血が……」
「血くらい少しは出るけど、怖がることはねえ」
「う、うん。そだね」
「な。つやつやしてきれいだろ?」
「竜児はすきなの?」
「好きだよ。ほら、くぱあっと開く」
「くぱあ……」

「自分でもやってみろよ」
「うん。沿わせて、入れてゆっくり進める、と」
「そうそう、あまり力込める必要はねえ」
「なんかドキドキしてきたよ」
「慣れが必要だな。そう、そうして入れ切ったら……」
「見てて……ほら、くぱあ」

「な?うまくできたじゃねえか。あっ、中骨棄てんなよ?揚げて骨せんべいにするんだからMOTTAINAI」
「ふう……鯵おろすのって意外に簡単なのね」
「天ぷらかフライかムニエルか、好きなもん作ってやるよ」
「ムニエル!」
「おう」



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