「知らないのか、奴らは二人で一人の狼。二つ名持ちだ」
「二つ名をもっているんですか。で、その名は」
「タイガー・アンド・ドラゴン」
「虎と竜。いやいやいや、やめてくださいよ、ばりばりに武闘派っぽいじゃないですか。男のほうなんか完全にその筋ですよ」
「いや。まぁ」
「なんですか、先輩」
「あー、あれだ。男は戦わない」
「はぁ?」
「あいつは引き留め役だ」
「え、引き留め役?妨害役ってことですか?」
「そうじゃない、あのちっこいのが暴れているところに現れて引きずって帰るのがあの男の仕事だ」
「……それ、狼じゃないですよね」
「まぁな」
「じゃぁなんで『二人で一人』なんて言うんですか」

先輩はその静かなまなざしを3割引の弁当からぴくりとも動かさずに言った。

「婚約しているらしい」




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