「あら珍しい」
呟く大河の目の前には、すやすやと夢の中の竜児。
寝巻きに着替えてないし机の上にはテキストやらノートやらが広げたままだし、どうやら少し仮眠するつもりが本格的に寝てしまったようで。
「手伝おうかと思っても、相手がレポートじゃどうしようもないものねえ……」
日曜だから時間はあるし、じっくり観察していたい気もするけれど、さすがにそういうわけにもいかないし。
「竜児ー、朝よー」
囁きながら指先で頬を突付いてみても反応はなし。
「むー……」
少し考えて、ちゅっと唇にキスをしてみるが。
「……やっぱり起きないか」
身を離し、見下ろす大河の顔に浮かぶのは柔らかな微笑み。
「しかたない、今日のご飯は私が作りますか。とりあえずしじみのお味噌汁と……夜は元気が出るような……山芋とかうなぎとかいっちゃおうかしら?」
音を立てないように気をつけて、大河が静かにドアを閉めた数秒後。竜児はむっくりと身を起こし。
「……あのタイミングで起きられるわけねえだろ」
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