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「実乃梨ちゃぁ〜ん、帰ろ?」
「あーみん……もう少し用がある振りで待つんだ。いいもん見せてやるぜ」
「は?」


「りゅーじ、帰ろ。みのりんまだ遅くなるって」
「そうか。タイムセールもあるしな」


「うー、冷えるね」
「おう暖冬暖冬いわれてるけどな」
「こうまで寒いのなら仕方ないわね……あんたのそっち側に手を回してと。ちょうどいいとこにポケットが」
「お前手袋外してまで。まあいいか。右手は一つのポケット共用だ。しかし余った左手は……」
「どうすんの?」
「肩、ってのもなあ。鞄あるし」
「同じ体勢取れってのよ……ほらこうして」
「だってポケットに手を届かせるのもきついだろっと、おう?」
「今度のコートはちょっと上にハンドウォーマー付いてんのよ」
「そ、そうか。手がかじかむし、仕方ねえな」
「うん。自然には勝てないのよ小っさい人間なんて。あっこら微妙な位置なんだからまさぐるな!」
「わ、わりい。置き場所は……この辺か?くすぐったくねえ?」
「ん。大丈夫。共用でなく専用に使っていい」
「おう、温けえ」

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「な!?すっげー抱きあいじゃんっ。一年中クリスマスかっての!」
「甘いね。あれが名付けて『大河×竜児冬季限定エックス戦法』だ!」
「なにそれ?」
「よーく背面を見てみるんだ」
「ああ。腕が交差してるってとこ?」
「ほらっ、道渡ると高須くんがさっと車道側に行くから手も入れ替える!」
「通学路なのに学校一歩出りゃあのいちゃつきかよ、やってらんね〜」
「ちっちっちw恐ろしい事には、あれで暖をとってるだけのつもりっていう」
「うっそぉぉ〜〜っ!!」
「こうして離れて眺める方があの波動にやらなくて済むってわけで……ふっふぉ」
「あー、鼻血鼻血鼻血」
「ありがと。ってわけで、お茶して帰ろうぜ?」
「そうね」

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「しかし寒いな?大河」
「ほんとね。早く暖かくなんないかな?」


〜おしまい〜



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