「ねえ竜児、ここんとこやけにパンが多くない?」
 そう問いかける大河の前にはトーストと目玉焼き。ちなみに本日の弁当の中身はサンドイッチ。
「おう、すまねえな。ちょっとポイントシール集めててさ」
「ポイント?」
「ほら、あれだよ。春のパン祭りってやつ。あの食器シンプルで使い勝手がいいし丈夫だし、けっこう重宝するんだぜ」
「ふーん……」


「竜児ー、お風呂空いたわよー」
「おう……って、大河、お前それ……」
「ん? 見ての通り浴衣だけど、何?」
「何かごそごそやってると思ったら……」
「お風呂上りに浴衣、何の不思議も無いでしょ?」
「そりゃそうだが……それ夏用とか言ってなかったか?」
「んー、だいぶ暖かくなってきたからいいかなーって。で、あんた用には甚平出してあるから」
「おう」

「おう?」
 風呂場から出てきた竜児の目に映ったのは、冷蔵庫に頭を突っ込んで何やら物色中の大河の姿。
「大河、どうした?」
「えと、ヨーグルト、残ってなかったかなーって……」
「それなら、昨日最後の一個食べてなかったか?」
「そうだっけ?」
 と、気づいたのは、後に突き出された大河の丸みに浮き出るはずのラインが見えないこと。
「……た、大河……お前ひょっとして…………は、はいて……」
 くるりと振り返った大河の顔に浮かぶのはにんまりとした笑み。
「や〜っと気づいたみたいねぇ、この鈍犬」
「な、何でそんなこと」
「浴衣なんだから不思議じゃないでしょ?」
「それにしたって、だな」
「大体、竜児が朝言ったんじゃない」
「お、俺が? 何を?」
「春の…ぱん祭りって」



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