「ねぇ竜児、これ聞いてみて」
「おぅ?」
大河はニコニコしながら竜児にプレイステーションポータブル、通称PSPを近づける。
『だーいすき!!』
「おわっ!?」
唐突に聞こえて来たのはここに居るはずの大河の声での大音量による告白。
思わず胸がドキドキしてしまった。
「あー驚いてる驚いてる」
大河はしてやったりとしたり顔。
「な、何だよ今のは」
「竜児『Routes』ってゲーム知ってる?これ結構面白いんだよ」
大河がそう説明していると、何故か発してもいない自分の声がPSPから聞こえて来た。
「ちょっと待て!!何でゲームから俺の声が聞こえてくる!?」
「ああこれ?えっとねぇ、なんとヒロインと主人公の声優が私たちと一緒なのだ!!」
「いや、だからってお前これは……」
PSPから流れてくる大河のバリバリストロヴェリィボイス。
「ああこれ?一旦落ちると甘々になるみたい……って何耳塞いでるのよ竜児」
竜児は耳を塞いで何やらブツブツ言っている。
「これは大河じゃないこれは大河じゃないこれは大河じゃない、そもそも俺にこんな甘い声を大河は出さない」
それを見た大河はニヤリと笑うと差し足抜き足忍び足。
竜児の耳元に近寄ると、小さく小さく、甘く甘く、呟く。
「りゅうじぃ?」
「ひゃー!?」
途端、竜児は大河のような叫び声を上げる。
それを見て大河は大笑いした。
「な、何だよ!!」
竜児は気分を悪くしたのか、そう言い捨てて何処かへ言ってしまう。
一人になった大河はふっと表情を消すと、PSPにポケットから出したイヤホンを繋ぎ、
「竜児の声、聞こえるよ」
トロンとした笑みを浮かべてゲームを再開し出した。
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